2026/4/22
お知らせ
【開催報告】日経「Sustainable Well-being Goalsフェス2026」 〜ローカルSWGsの事例 糸島での取り組み〜
日本ウェルビーイング財団 代表理事の淺井明紀子が、日本経済新聞社メディアビジネス主催の「SWGsフェス」(https://events.nikkei.co.jp/80789/)に登壇し、 「ローカルSWGsの事例〜糸島での取り組み〜」について語りました。

登壇者
◆ モデレーター
金ヶ江 悦子 氏 公益財団法⼈Well-being for Planet Earth 教育担当責任者
大阪生まれ。関西外国語大学卒業、青山学院大学大学院MBA取得。2010年ミス・インターナショナル日本代表。
Well-being教育を専門とし、企業・自治体において人の在り方を軸に、リーダー育成や組織づくりに関する研修・講演を行う。福岡ではSWGsを実践的に学ぶ教育プログラムを展開中。
◆ パネリスト
古藤 海星 氏 牡蠣小屋のぶりん 漁師
福岡県糸島市の岐志漁港で21年間続く牡蠣小屋「のぶりん」の3代目。
16歳から漁師として家の手伝いを始め、尊敬する知人からの「美味しい」の一言をきっかけに、より美味しい牡蠣を作るための方法を学び、試行錯誤を繰り返す。2021年から海外で盛んに行われていると知った「シングルシード方式」に注目し、従来の垂下式に加えてこの養殖方法を取り入れ、ブランド牡蠣の開発に取り組む。
その後、牡蠣ワングランプリにて、24年に「海王」が優秀賞、25年に「姫夏」が最高金賞を受賞する。
田中 郁弥 氏 NPO法人つむぎ 代表理事/Cultivate 代表取締役
1999年生まれ。福岡県出身。
2019年九州大学進学を機に糸島へ移住。まちづくり団体iTOPで古民家カフェ運営や子ども向けイベント等の地域活動に携わり、21年に同団体代表に就任。同時期一般財団法人雲孫財団立ち上げ期に参画し、バックオフィスからプロジェクト進行まで事務局業務全般に従事。25年にNPO法人つむぎ(福祉×地域)・Cultivate(産業×地域)を設立。自然・文化・人をつなぐ地域循環モデルの実装に取り組む。
淺井 明紀子 公益財団法人日本ウェルビーイング財団 代表理事
愛知県出身。1995年有限責任監査法人トーマツ入社。
公認会計士として監査業務に従事する傍ら、採用・人材育成・組織開発を推進。DEI・Well-beingリーダー、トーマツチャレンジド 代表取締役を歴任。2025年9月退職。現在は日本ウェルビーイング財団代表理事として、ウェルビーイングを軸に経済と社会の持続可能な構造転換に取り組む。
セッション内容
SWGsとは――SDGsの次なるアジェンダ
セッションは、モデレーターである金ヶ江氏によるSWGsの解説からはじまりました。
SDGsは2030年に終了を迎えますが、「SWGs(Sustainable Well-being Goals)」は国連生誕100周年とも重なる2045年を目標年に掲げたものです。SDGsが「負の遺産を将来世代に残さない」ための課題解決を主眼としていたとすれば、SWGsはさらに踏み込み、「正の遺産をいかに将来世代へ手渡すか」を問うものです。
金ヶ江氏はウェルビーイングを時間軸で整理し、「今この瞬間(マインドフルネス)」「短期的(関係性)」「中期的(意味)」「長期的(未知への挑戦)」「超長期(将来世代への貢献)」という五層構造を提示しました。この超長期の視点こそが、SWGsが大切にする「人・社会・地球の調和」に直結するものだと語りました。
糸島でのSWGsの取組事例①牡蠣小屋のぶりん~「おいしい」の一言が、作業を誇りに変えた~
16歳から牡蠣漁を始めた古藤氏は、当時ゲームに夢中な少年でしたが、転機となったのは、尊敬する方に送った牡蠣を「めちゃくちゃ美味しい」と喜んでもらえたこと。その一言が、どうすれば美味しい牡蠣が作れるかを探求するきっかけとなりました。
美味しい牡蠣作りへの試行錯誤の中で出会ったのが、専用のバスケットで牡蠣を波に揺らしながら育てる「シングルシード方式」でした。「シングルシード方式」を採用する牡蠣漁師は少なく、周囲からは懐疑的な目を向けられながらも「シングルシード方式」にこだわり牡蠣作りを続けた結果、全国牡蠣グランプリで2024年に優秀賞、2025年に最高金賞を受賞するまでに至りました。
さらに古藤氏は、牡蠣の美味しさが糸島の豊かな自然環境によって育まれていることに気づきます。山の岩盤が生み出す珪藻や鉄分、落ち葉から出るフルボ酸、そして雷山に落ちる雷が引き起こす窒素固定 -それらすべてが川を伝って海へと流れ込み、美味しい牡蠣を育てていることを学びました。食べ終えた牡蠣殻を砕いて農作物の肥料(シーライム)に還元する、という山・川・海の循環にも関わるようになり、「山のミネラルが海を育て、海が山を育てる」という自然の連なりを体感的に理解するようになりました。
糸島でのSWGsの取組事例②NPO法人つむぎ/Cultivate~地域で働くとは、人・社会・地球の調和を自分ごとにすること~
田中氏は九州大学卒業後、「都市に出るか、地域に残るか」という地方ならではの悩みがありながらも、そのまま糸島市に残ることを選び、迷いと葛藤を抱えた世代の一人として、地域で働くことの意味を問い続けてきました。
NPO法人つむぎでは、子どもたちが幼い頃から多様な大人や価値観と触れられる環境づくりを目指した子育て支援を展開しています。一方、Cultivateでは、地域産品の情報発信強化や地域の魅力体験プログラムの運営を通じて、地域経済の循環を促しています。
田中氏が特に力を入れて活動しているのが、糸島での1泊2日体験プログラムである「SWGsツアー」です。ツアーの売上を「お客様からの共感の総量」、費用を「関わってくださった皆さんへの感謝の総量」、利益を「将来世代と自然環境をより良くするための自由の総量」と言い換え、ステークホルダーである人・社会・地球それぞれへの還元を可視化する取り組みに挑戦しています。
また、山・川・里・海の流域循環を体感できる子ども向けプログラムを企画した経験から、「地域に残った人間だからこそ、将来世代への橋渡し役になれる」という思いを語りました。
SWGsの取組事例 公益財団法人日本ウェルビーイング財団~分断ではなく、つながりから課題の根っこを変える~
淺井は、当財団のビジョンである「人も社会も地球も、すべての生きとし生けるものがウェルビーイングである未来を創る」ことへの想いを紹介しました。
「人のウェルビーイング、社会のウェルビーイング、地球のウェルビーイングと、言葉で区切ってしまった瞬間に、それぞれの繋がりが分断されてしまう」と語り、個別の課題に一つひとつ対処するのではなく、課題を生み出している構造そのものを変えていくことが財団が目指す社会変革(システミックチェンジ)です。
淺井は、古藤氏や田中氏のような現場の実践者とつながり、その知見を社会全体の財産として蓄積・発信するコミュニティ型財団として、資金だけでなく、人の英知や自然資本、関係資本など、あらゆるものをつなげて、課題の構造自体を変えていきたい、と語りました。
取組事例を踏まえたトークセッション
三者の発表後、モデレーターである金ヶ江氏を交えたトークセッションを行いました。
淺井が古藤氏に「自然を意識するようになってから、仕事への向き合い方で何か変わったことは?」と問いかけると、古藤氏は「雨や雷について、以前は作業の弊害になると思っていたが、今は農作物や海にとって最高の恵みだと感じ嬉しくなる」と答え、会場が温かい雰囲気に包まれました。
淺井は「地球規模で発生している気候変動という言葉には自分との距離があったけれど、フィールドワークなどで自然の中に自分が含まれているという感覚に変わった時、地球環境の問題がぐっと自分のものになった」と語り、古藤氏の実践がまさにそれを体現していると共感しました。
田中氏は「夕暮れ時に事務所に差し込む光を見て、明日に向けて切り替えるモードになれる。地域における自然との距離の近さが、日常のウェルビーイングそのもの」と語りました。
おわりに
食と自然の循環(古藤氏)、地域経済と人との循環(田中氏)、そして社会構造の変革(淺井)——三者のお話は、スケールは異なれど、いずれも「人・社会・地球の調和」というSWGsの本質を現場から体現するものでした。
淺井は最後に「SWGs宣言があり、2030年以降にいよいよSWGsが本格的に社会の中心に置かれる時代が来る。ウェルビーイングを中心に置いた世界に変えていけるんだというワクワクを感じさせていただいた」と感謝を述べました。
日本ウェルビーイング財団はこれからも、現場の実践者や多様な仲間とつながりながら、ウェルビーイングの輪を広げてまいります。
登壇の機会をいただいた日本経済新聞社の皆様、そして共にセッションを盛り上げてくださった金ヶ江氏・古藤氏・田中氏に、心より感謝申し上げます。
